Mr. Lee「直接施行」と闘う

神戸市当局による「直接施行」強行を弾劾する!
今なお続く「区画整理」という名の被災者イジメ,生活再建妨害を許すな!

阪神淡路大震災の被災地・神戸で今なお続く,いやいっそう猖獗をきわめる,神戸市当局による被災者イジメ生活再建妨害の現実の一局面をここに紹介しよう。これはまた,震災にともなう問題である以前に,「株式会社神戸市」積年の宿痾ともいうべき問題でもあることを忘れてはならない。

被災者−市民に牙をむいた神戸市当局

阪神淡路大震災から13年を経て,まだ被災地の復興・再建がなされていない現実を,改めて想起させる事件が,地元紙,在阪マスコミによって報道された。関西地方の方であれば少なくともその一つぐらいは見聞したであろう。

震災復興区画整理で初の直接施行 神戸市」(2008/08/06 神戸新聞)

 神戸市は六日午前、震災復興土地区画整理事業を進める新長田駅北地区で、移転協議の成立が望めないとして、六十代男性の自宅建物=同市長田区松野通三=を強制的に移転する「直接施行」に踏み切った。震災復興のまちづくりで、神戸市がこうした措置を取るのは初めて…

震災復興区画整理で初の直接施行 神戸市報道にある焼失した家屋の持ち主は李得実(村田実)さんだ。成人式を迎えたばかりの次男を震災でなくし,その悲しみの中から200回近い復興ボランティアコンサートを開いて被災者を激励したり,若手芸術家の交流支援,ホームレス支援などといったさまざまな活動を永年にわたって行ってきたことや,自宅兼作業所であり,こうした活動の拠点でもあった地を失ったことについては,すでに紹介したとおりだ。

その後,長田区松野通の,震災で焼失した自宅跡に建物を建て,さまざまなアピールを続けてきた。その時点で既に,その周辺では新たな道路整備がなされており,建物もそれらにかからないどころか充分な距離を隔てて建てられていた。にもかかわらず,その翌年になって神戸市当局は突如として「区画整理」を口実に「移転」を強要し始めたのだ。

そうした中,今2008年3月,李得実さんが外出中に火の気がない自宅にて火災が発生,全焼した。建物はもちろん,家財や,活動に使っていた機材類,さらには震災で亡くなった次男の遺骨までもが焼かれてしまった。当初から放火の疑いが濃厚とされながらも,火災から程なく焼け跡は神戸市当局によってフェンスで囲まれ,立ち入りを拒み,補修もできない状態になるという異常な事態が,この「直接施行」以前に,既に起こっていたのだ。

火災直後の李得実さん宅程なくフェンスで囲まれた李得実さん宅
火災直後 (左),程なくフェンスで囲まれた李得実さん宅 (右)(2008.3)

したがってこれは,直接的な名目上,震災復興区画整理としてなされたものであるが,それにとどまらないものがあるといえよう。

李得実さんは,四たび住処を失い,目下ホームレス状態となっている。のみならず,このかん持病を悪化させた際に充分な治療の機会を奪われるなど,一時は生命の危機に瀕したことすらある。この苛酷な攻撃と情況にたいして,命がけで訴え闘い続けてきた李得実さんに,あたかも匕首を振り下ろすかのごとくかけてきた攻撃が,まさにこの「直接施行」であるといわねばならない。

「直接施行」という名の「地上げ」

そもそも一般論として,住宅地において区画整理を行うことによって,整理事業者側は錬金術的に利益が得られる一方で,住民−地権者には利益がもたらされることは少なく,かえって不利益や高負担がもたらされることが多いこと,また,震災被災地の,とりわけ甚大な被害を被った地において,区画整理を行うこと自体の犯罪性・反動性については,既に多くの論者の指摘するところであるから,ここであえて繰り返すまでもないであろう。

直接施行」とは,区画整理事業を行う事業者が,「整理」対象地にある建物などの所有者との「協議」が成立しなかった場合,これを強制的に排除するものだ。もちろん「協議」といっても多くの場合,事業者は地方自治体−行政当局であり,地権者らにたいして一方的な姿勢と圧倒的な力関係で臨むもので,通常の社会通念における「協議」とはかけ離れたものだ。また強制力を用いるにあたっても,裁判所に申し立てて執行官によって行われる「強制執行」のような手続や規制はほとんどなく,実質的には事業者自身が自らの手でいかようにもできるものなのだ。

まさに「直接施行」とは,区画整理において,事業者側によるむき出しの暴力を用いてのやりたい放題といって過言ではない。区画整理事業自体が「地上げ」といえる場合も少なくないが,その中でも「直接施行」は最終手段であり,並の「地上げ」を凌駕する究極の「地上げ」のひとつの形態といえよう。

李得実さんが記録した「直接施行」の現場写真を紹介しよう。

「直接施行」強行現場「直接施行」強行現場
「直接施行」強行現場「直接施行」強行現場
「直接施行」強行現場「直接施行」強行現場
「直接施行」強行現場 (2008.8.6)

震災の痕跡をかき消すのが「復興」か!?

阪神淡路大震災で大火を被った長田の地では今なお空き地が目立っている。震災で多くの家屋が倒壊・焼失し,多くの命が失われただけでなく,「区画整理」を口実に,かつての住民がそれまで長く生活してきた地に戻ってこられない情況が,今なおつくられている。震災を逃れて他所で生活して今なお戻って来られない人が多いことは,震災以前この地に数多くあった町工場でたくさんの人が働き,これらへの搬出入のため道路にはトラックがあふれていたという,古くからの住民の話からも解るが,現在のこの地で往時を想像するのは難しい。しかも震災後同地に建てられた住宅には,震災後新たにやってきた住民も少なくないという。

焼失前の李得実さん宅,ボランティアグループ地球村外装の一部に被災建造物の煉瓦
焼失前の李得実さん宅,ボランティアグループ地球村(左),外装の一部に被災建造物の煉瓦(右)(2006.1.8)

李得実さんは,件の建物を建てた際,震災を忘れないため,震災で焼失した家の煉瓦を利用するなど,その活動拠点にふさわしいものとしてきたが,実は同じ新長田の地にもうひとつ建物を所有していた。李得実さんは震災前,ここで永く写真館を営んでいて,地元では親しまれていた。その建物が震災で倒壊したあと,震災を忘れないためのモニュメント(「地震ホーム」)として,壊れたままの姿で残していたところ,不当に奪われたということが,以前にもあったのだ。当局側のたび重なる弾圧と民族差別である。

この地域では,震災以前の町並みや,人々の営みを想起させるものは,ほとんどなくなっている。わずかに残されたものも,不当に,暴力的に排除されている。今回の直接施行」なるむき出しの暴力をもってしてなされたものは,そうしたものの一環であるといわねばならない。

震災の痕跡をすべてかき消すのが「復興」なのか!? 利権創出の機会ではないか!? しかのみならず住民構成を当局の都合のいい形につくりかえる「民族浄化」でもあることを,ハッキリと看破しなければならない。

いかに糊塗し,隠蔽し,抹殺しようとも,震災と,それによってなされたいっさいのものを決して忘れてはならないことを,今一度しっかりと確認しておこう。

そして,かかるものを忘れないことが,震災犠牲者を悼むだけでなく,神戸市当局などへの抗議となり,被災者のひとりであり直接の被害者である李得実さんはもちろん,すべての震災被災者,圧政・暴政の被害者・犠牲者への支援への第一歩となるのだ。

(2008.8.20)

参考

Mr. Leeと行ったホームレス支援日記」・「Mr. Lee「地面師」と闘う

震災被災者 李 得実さんのこと」(長田 山古志復興物語 2008/07/27)

第14回 都市計画の非人間性(上)」(1996.7)・「第15回 都市計画の非人間性(下)」(1996.8)(「震災フォローアップ」 和田芳隆)

神戸国際港都建設事業震災復興土地区画整理事業施行規程 平成7年10月12日条例第33号
土地区画整理法(昭和二十九年五月二十日法律第百十九号)

震災復興区画整理で初の直接施行 神戸市」(2008/08/06 神戸新聞)
長田の復興区画整理事業 移転拒否の建物、神戸市が初の強制撤去 /兵庫」(2008/08/06 毎日新聞)

新長田駅北地区震災復興土地区画整理事業における直接施行について 2008/08/06 神戸市

復興の街で145回目のコンサート 神戸の男性、被災者とアーティストの懸け橋に
「復興の街で145回目のコンサート 神戸の男性、被災者とアーティストの懸け橋に」
(阪神大震災から5年 2000年1月10日朝刊分 産経新聞神戸版)

李得実さんの連絡先はこちら;
〒653-0841
神戸市長田区松野通3丁目6-5
SOS人民救援の村 震災の復興と支援の村 村長 李 得実(村田 実)
090-3275-5519 ririmurata@docomo.ne.jp

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