ホテルシェレナの現状

ホテルシェレナ内部見学会

震災から7年目にあたる2002年1月17日,震災で被害を受けたままそのままにされている,ホテルシェレナの内部見学会が行なわれた。

神戸駅側から見たホテルシェレナ(左が西館,右が本館)
神戸駅側から見たホテルシェレナ(左が西館,右が本館)

ハーバーロードに面した,三越百貨店があった場所に,同ホテルは,1986(昭和61)年に本館を開業(1期工事),1990(平成2)年に西館を開業(2期工事)し,震災時まで営業をしていた。周囲では建物の被害が少なかったにもかかわらず,この建物の被害は大きく,損傷箇所をはじめ,いたるところに重大な欠陥があることが判明した。営業を再開するにおいて,ホテル側としては,安全を確保する義務があるので,建物の根底部分からの手直しが必要な,この違法な建物について,行政には建築会社にたいする指導を,建築会社には,この危険な建物への対処を求めたが,聞き入れられることなく,法廷での争いにいたった。

〔本館棟〕:震災で建物に重大な被害が出た上,欠陥建築であることが明らかになった。にもかかわらず,建物所有者・大和土地建物は,これを使用可能であるとし,使用しないのであれば借主であるホテルシェレナに立ち退くよう裁判を起こしている。

今回の見学会では,現在法廷に持ち込まれている致命的な建築欠陥の説明はさておき,今この時点においてすぐにでも起こりうる危険,すなわち金物によって外壁コンクリート壁に吊るす工法をとられている仕上げの石の落下,その原因になる石が吊られている外壁コンクリート壁の損傷状況を情報公開した。

植中倫子さん説明会風景 
見学会風景

見学会には,東條健司・週末ボランティア代表らの尽力により週ボラメンバーや報道陣などを含め,2回にわたり合計約160名が集まった。ホテルシェレナの関係者が案内・説明した。館内は震災後数年間そのままになっているため埃がひどく,ホテル側の要請で参加者はマスクをつけた。

内部から見た西側外壁:崩壊防止のつっかえ棒がある内部から見た西側外壁:ハーバーロードに面している
内部から見た西側外壁

耐震壁が地震により上下におしつぶされ,鉄筋がおし曲げられ,コンクリートが剥落している。

内部から見た西側外壁
同上

道路に面した本館西側外壁に亀裂が入っている。このコンクリート壁の外側に外装の石が吊り下げられている。この壁はハーバーロードの歩道に面しており,またこれ以外の外壁コンクリートも同様の状況のものがあると推測され,たいへん危険である。

当日撮影したホテル内部

本館西南部本館西南部
本館西南部

宴会場(大ホール)
宴会場(大ホール)

西館北部可燃性材料で作られた採光ドーム天井
西館北部

エントランスを入るとドーム天井がある。これは可燃性材料で作られている上,この天井にはスプリンクラーがない。にもかかわらず,監理者・建設業者は,消防署をいつわり「マル適」をもらっていた。

地下:コンクリートの「継ぎ目」が見える壁面地下:手抜き工事のため,異様に湿度が高くカビだらけ
地下

地下駐車場:結婚式などに使われたロールスロイスのリムジン地下駐車場:残された2台の軽自動車
地下駐車場

結婚式などに使われたロールスロイスのリムジンとともに,2台の軽自動車が残されている。震災で持ち主が亡くなったのだろうか。

裁判所の公的鑑定人が建物下の空洞部分を調査した跡
裁判所の公的鑑定人が建物下の空洞部分を調査した跡

2カ所ボーリングをしたところ空洞が見つかった。ホテル建設以前にこの地にあった三越百貨店の基礎を完全に除去しないまま,ホテルの建物を建設しているので,このような空洞はまだ多くあると思われる。この建物は杭がなく,ベタ基礎工法で建物が直接地盤の上に乗っているため,空洞は大変危険である。

西館客室前の廊下:可燃性の建材が用いられている
西館客室前の廊下

西館客室前の廊下外壁の一部に,2分余りで燃え上がる建材を使用している。この燃える外壁は各客室フロアに使用されている。

客室:破損した壁面から外が見える客室:内部の鉄筋が床や天井と続いていない
客室

客室の破損した壁面からは外が見える。各客室フロアの耐震壁はすべて,鉄筋が床や天井とつながっていない。

その後…

内部見学会から約1年後の姿を見てみました。裁判は依然膠着状態とのこと。

ハーバーロードから見た外観正面入口東側外壁(西館)
ハーバーロードから見た外観(左), 正面入口(中), 東側外壁(右) (2002.12.28)

西館北側:元町商店街沿い,阪神西元町駅前
北側 (2002.12.28)

(2002.12.31)

本館正面入口奥本館正面入口奥上部西館東側外壁
正面入口奥(左), 同上部(中), 西館東側外壁(右) (2003.3.22)

本館正面入口附近本館南側
本館正面入口附近(左)と南側(右) (2003.3.22)
Hotel Cherena, Motomachi Kobe Japan ホテルとしての電話での対応は01年で終わっている。

2002〜03年の年末年始以降,道路に面したところでは,人為的毀損が増えている。窓や外壁への落書はあとを絶たず,侵入者もかなりいる模様。正面入口横のブロンズ製の格子も破壊された。

もちろんホテル側としても,これに対して指をくわえて見ているわけではない。とはいうものの,裁判の泥沼化に加えて,行政当局である神戸市からも虐待・攻撃を受けているといっていい現状では,事態に対応すべくあまりにも微力だといわねばならない。

この詳細について,今ここではふれないが,長期戦でホテル側をさらに追い込もうとしているようだ。 (2003.3.25)



『神戸新聞』記事:震災で損壊 ホテルシェレナ 明け渡し請求棄却
裁判を報道する『神戸新聞』記事 (2003.3.26)

2003年3月25日,本館の裁判について神戸地裁で一審判決がおりた。本館建物の所有権を持つ大和土地建物(株)がホテル側に求めた訴訟について,原告・大和土地建物側の明け渡し請求を棄却するものであった。また,原告があわせて求めた賃料支払いを,震災前に限って認めた点については,震災以前の早い時期から明らかになっていた建物の欠陥を,裁判所がどの程度認識したか疑問が残るものだ。

判決では,大和土地建物(株)に修繕義務があるとしたが,この建物は未だに手を加えられることなく,放置されている。 (2003.4.17)

廃墟となって9年目の梅雨の一日,ホテルシェレナを訪ねた。

西館1Fロビー:採光天井からの雨漏りがひどくなっている
西館1Fロビー (2003.6.16)

土混じりのコンクリート土混じりのコンクリート
土混じりのコンクリート (2003.6.16)

いずれも地下外壁部分。茶色く見えるのは紛れもなく土。基礎工事に先立って防水がなされなかったため,地下水でコンクリートが流失し,かわって土砂が混じったと考えられる。   (2003.7.12)


資料

見学会案内チラシ (2002.1.17)

 震災から八年目を迎えようとしております。ホテルシェレナは地震で破壊された事により,違法建築である事が発覚し,この建物を使用する事自体が違法である事が判明しました。 営業を再開する事も不可能になり,早期に解決するであろうと思われた裁判も,難航しております。

 現在,最も危険な状態にあるのは,ホテルシェレナの中央に位置する本館の建物です。 この建物の下には空洞が有ります。三越百貨店であった地下部分を完全に取り除くことを怠り,その部分が空洞になったままの状態で,ホテルシェレナ本館は,直接この空洞のある地面の上に,杭も打たず,ただ載せただけの建て方をしているのです。

1,本館の所有者である大和土地建物は「この建物は使用可能である」として,使わないのであれぱ,立ち退きを求める裁判を起こしてきました。ホテルシェレナは裁判の勧めに応じ,本館の鑑定を受けました。要約しますと次のような結論が出ました。

ホテルシェレナ本館棟の重大な欠陥部分

1 旧三越建物の地下部分の未撤去

 設計図書及び施工図では,旧三越B階スラブ撤去の上,耐圧版天端よりラップルコンクリートを打設することになっているが,旧建物の地下を撤去せずピット部分を空洞のまま上階に建物を施工していた。杭を打たずに建てられているこの建物は水の上に浮いているのと同じ状態である。現在は地下水があるためバランスを保っているが,地下水に変動が生じた時は,建物に重大な被害をもたらす可能性がある。

2 一部地盤改良の未施工

 上階からの荷重を安全に地盤に伝達するため,耐圧版下での悪い地盤を改良することで,安全な地盤を作ることが地盤改良である。この部分に手抜き工事が行なわれた。地盤改良を行わず建物を積み上げていった為,未改良部分の地盤は上階の重みに耐えられず,不安定な地盤が今回の地震で,更に不安定な動きをした結果,非常に多大な被害をもたらす結果となった。

3 構造計算の間違い

 設計図書と鑑定結果の重量を比較すると,鑑定結果の重量がかなり増加している。そのため,1階〜中3階において一部の柱で,脆性破壊(崩れること)を起こす。

2,裁判所は,このままでは使用に耐えないと認識し,大和土地建物に対して和解を勧告しましたが,それを断り,今でもシェレナが出ていけぱこの建物を大和土地建物(株)で使用すると言い続けております。

3,この大和土地建物の態度に裁判所は引きずられております。この建物の実情をご覧頂き,又,本館のハーバーロード側の外壁が大変危険な状態にあり,通行人に被害を与える可能性もあると思われることから,出来るだけ多くの市民の皆様に実態をご覧頂きたく,今回の計画を致しました。ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

ホテルシェレナ

(一部,引用者が修正した部分がある)

見学会参加者への手紙 (2002.2.17)

春はまだ浅く真冬のように寒い毎日が続きますが、
皆様ご健勝のこととお慶び申し上げます。

 去る1月14,17日に於いて、ホテルシェレナの内部視察に
ご参加頂き、誠にありがとうございました。
ご来館の際のアンケートに対し、ホテルシェレナ説明会にも多数の御希望が
あり、御理解を深めて頂く機会ができますことを、大変心強く感じ
感謝しております。

 内部視察の折り皆様にもご覧頂きましたが、一番危倶しております
ホテルシェレナ本館の外壁に対し、大和土地は外部に貼られた石のみの
安全確認にとどめ、外壁の本体部分であるコンクリート壁は、安全確認を
する事すら拒み続けておりました。
今にも崩落しそうな外壁(コンクリート壁)はそのまま放置する姿勢を
頑なに崩しません。
そこで双方の弁護士を交え、再度の依頼も致しましたが、聞き入れては
くれませんでした。外壁のコンクリート部分は大和土地の所有物である為、
これ以上の方法手段はなく、たいへん悲しいご報告になってしまい、
申し訳なく思っております。

 説明会の開催予定日を早く決定し、皆様方にお知らせしなければと
思っておりましたが、以上の事が良い方向に進み、とりあえずの安全が
確保できた事を、皆様にお知らせできる事になってから、説明会を開催
致したく思い、今日に至ってしまいました。
早急に説明会の会場を確保し、開催の日程をお知らせしたいと思って
おりますが、いましばらくのご猶予をお願い致します。

平成14年2月17日      
ホテルシェレナ  植中 倫子

※ここでいわれている「説明会」は開かれていない。

参考

ありし日のホテルシェレナ
(かつての姿を資料でたどったページ。内部平面図もあわせてご覧下さい。)

手前、神戸中央郵便局、先の方はホテルシエレナ」1996.1.22撮影・「ホテルシェレナ」1997.11.12撮影
「震災記録写真」 震災直後から2002年1月まで放送カメラマンの大木本美通氏が仕事のかたわら個人的に撮影したもの。約22,000枚の写真が神戸大学附属図書館 震災文庫のサイトで公開されている。)

Photo Album:
SEO [PR] J[hr AEx o^C av[g^T[o[ Cu`bg SEO