弱者イジメの
現状固定化策動を許さない!
ここがおかしい!「生活保護の運用に関する要望書」

阪神淡路大震災から満13年となる2008年1月17日にあわせて「生活保護改革を考えるひょうごネットワーク」が,神戸市当局にたいして生活保護の運用に関する要望書を提出しようとしていることが判りました。現在判っている要望項目は以下の通りです。

1、生活保護の適正な運用について
 (1)申請権の侵害を絶対に行わないこと
 (2)「保護辞退届」「保護申請取り下げ書」について
 (3)「指示書」の運用について
 (4)根拠のない違法な取り扱いを根絶のための取り組みについて
 (5)住居がない場合の申請の受け付けについて
 (6)開始決定期間の遵守について
 (7)資質向上への対策を行い権利侵害を防ぐことについて
2、要保護世帯向け長期生活支援資金(リバースモーゲージ)の取り扱いについて
3、決定通知書の記載内容について
4、外国人の生活保護の権利について
5、DV被害者への生活保護適用に特に配慮し二次的被害を根絶することについて
6、就労支援と生業扶助の活用について
7、保護利用者の権利の教示について
8、個人情報の保護について
9、保護開始決定前の治療・服薬について
10、外国人等の通訳・翻訳の保障について
11、回答及び話し合いについて

要望書を出す主体は上記の「ネットワーク」で,その活動内容と組織形態は「神戸市内で生活保護受給者や生活に困窮した方の相談・援助活動を行っているNGO/NPOによるネットワーク」とあり,それ自身に問題はないでしょう。しかしながらその要望項目については,厳しい見方をしなければなりません。

「 1、生活保護の適正な運用について」以下の項目のほとんどが運用面に関することですが,制度自体の次元においても,運用面の次元でも問題を孕んだものも含まれています。 そのひとつひとつについて述べるだけの紙幅はありませんので,目についたところをいくつか,その性格ごとに代表的なところだけを,ここでは採り上げます。

機ヌ簑蠅△訐度の濫用を導く危険:リバースモーゲージ

既に制度自体の問題点が指摘されており,その運用如何によっては,生活保護受給者をはじめとする市民の不利益,権利侵害を進める危険があるものがあります。「 2、要保護世帯向け長期生活支援資金(リバースモーゲージ)の取り扱いについて」などはその代表例です。

要望内容を見ても抽象的で,利用者・市民にとって真に有効で利益になることを保障するようなものなのか,判断に苦しみます。最悪の場合,かかる要望が,制度の濫用の突破口になりかねません。またその予防・抑止についての展望を読み取ることはできません。

供ダ験菠欷郤給対象にとどめおくことが問題:中国残留孤児

また「10、外国人等の通訳・翻訳の保障について」で,中国残留孤児について触れています。現在,中国残留孤児のほとんどが生活保護受給者といわれ,生活保護にかんしての重要なファクターとなっています。そもそも彼らが生活保護によって生活しなければならない現状を生み出した原因を顧みることなく,即自的対応を「保障」して,どのような解決・前進があるのでしょうか?

周知のように,日本語学習をはじめとした自立生活支援策の不十分さが,その出発点です。もとをたどれば,国家が起こした戦争によって犠牲・難儀を強いられながら,それに報いられなかった人たちです。

彼らの生活環境改善には,戦争によって難儀した他の人たちになされた施策(軍人恩給など)や,新しいところではいわゆる拉致被害者にたいしてなされた施策と同等のものや,それらとのバランスを斟酌したものをもってなされるべきとする主張が,広くなされています。 これらのいずれにしても,国の責任が大前提ですから,国の予算でまかなわれるべきものであって,地方自治体の福祉予算から出される生活保護でまかなおうとすること自体が筋違いということになります。

かかるものについては,現状固定化を進めることが,本来得るべきレヴェル・内容のサポートを得る機会を喪失せしめ,「最低限度」におしとどめるものであるといわねばなりません。この場合,国の施策に切り替えることを展望した,実際的施策こそが展望されなければなりません。

掘ダ度適用漏れと黙殺:「ワーキングプア」

このように,本来よりいっそう「健康で文化的な」生活が保障されてしかるべきでありながら「最低限度」におとしめられている例もあれば,それから依然漏れているものもあります。 本来生活保護は,全か無かだけではなく,一時的な困窮や,収入不足分の補填程度の支給を行うものでもあり,平素から従事されている活動の中でもそうした事例に少なからず出会っていることと拝察します。

また今日いわゆる「ワーキングプア」といった,生活保護水準以下の収入しか得られないケースが増えており,かかるもののなかにも生活保護をもってすべきものがあります。これについては当然現行制度内で行うことが可能なものであり,実務・運用面の問題とみなすことができます。しかしながら,こういった層にたいする提言も要望も含まれてはいません。

しかのみならず,「ワーキングプア」であっても税負担等は強いられ,地方税増税のあおりを受け(地方への財源委譲により,トータルとして国税減税分と地方税増税分がイコールになるとされますが,低所得者層では負担増)てとりわけ苦しみながら,国民健康保険料(神戸市は他の政令指定都市や東京都特別区に比べて割高!)を払わされている者も多くいます。なかには,これらを差し引いて手許に残る分が生活保護水準を下回る層もいます。

このように,いっそう厳しい大衆収奪にさらされ,本来であれば生活保護などの公的支援策を享受すべき立場にありながら,逆にそのための費用負担を強いられる側におかれていることを,見落としてはなりません。

かかるもの抜きの要望や提言は無視・放置にほかなりません。見殺し以上に残酷なことです。

何が書かれているかとともに,何が書かれていないかもあわせて検討しなければなりません。これはその一例に過ぎません。

「知行合一」をもって臨むべし!

私が震災の年から活動に参加してきた神戸・週末ボランティアは,2008年1月5日,「訪問活動450回記念 追悼と討論の集い 13年目の被災地から〜「高齢者」となった被災者のこれまでとこれからを中心に〜」と題した集会を実現し,これまで公的な支援策やセイフティーネットから漏れ,自助努力を過酷に強いられて来た被災者と交流し,彼らがこれまでおかれてきた情況について討論し学び,彼らが今後あるべき情況について展望することを目指しました。

その成果を,この「要望」にたいする姿勢として反映させるべきではないでしょうか?

私自身としては,かかる趣旨を呼び掛けた者の責任を全うする立場から,かかる重大な制度適用漏れと黙殺を,絶対に許すことはできません。

それ以前に,公的な支援策やセイフティーネットから漏れやすい層の一人として,わが身に降りかかってくることに思いをいたすならば,かかるものを看過することが自殺行為になりかねないともいえます。自分自身が辛くも災禍を逃れても,その傍らで呻吟する人を見殺しにするようなものであるともいえます。

以上のように,この「要望」は,弱者イジメの現状固定化をもたらすものであり,とりわけ現行制度下にあって無視・放置されている層をいっそう難儀な情況へとおとしめるものにほかなりません。

こうしたことをハッキリと識り,これにふさわしい行動をもって臨みたいと思います。

(2008.1.10)

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